No.034 ■慣用句/目が安い/
慣用句というのは、2つの語から構成され、句全体の意味がもともとの語の意味とは異なる使われ方をする。日本語では「足を洗う」「骨を折る」「油を売る」などがある。
例えば、「田植えの後、足を洗う」なら、文面通りに足を洗っている意味だが、「ヤクザ稼業から足を洗う」なら「ヤクザをやめて堅気になる」という意味になる。
同じく日本語の「目が高い」は、鑑識眼がすぐれている、目が利くという意味で使われ、「さすが、お目が高い」等という。
日本手話には/目が高い/と/目が安い/という慣用句がある。
用法例を挙げておいた。
・隣に座っている女性が妊婦だったことに気づかなかった私は/目が安い/。
・嘘をついていることに気づいた友人は/目が高い/。/目が安い/私は友人の嘘を最後まで見抜けなかった。
・地図を片手にウロウロ、まさか目の前が私の探していた場所とは、ほんとに/目が安くて/情けない。
・落としたコンタクトレンズを探して1時間。友人は1分もしないうちに床に落ちていたレンズを拾い上げた。/目が高い/友人に感謝。
上の用法例でおわかりかと思うが、日本手話の/目が高い/は、よく気づく、観察力がある、目ざとい、敏感等といった意味に使われ、/目が安い/は、鈍感、注意力が足りない等という意味に使われている。
このように、日本手話には、日本語の「目が高い」とは全く違う使われ方をしている/目が高い/と日本語にない慣用句/目が安い/が存在する。
手話通訳者や手話を教えている聴者がこの用法を全く知らないでいるのはまだいい方だ。
「ろう者は日本語の知識が不足しているために元の用法を間違えて使い、それが定着してしまっている」と手話指導者(聴者)は言い、「ろう者が間違えた用法で手話をした時は、通訳時には丁寧な日本語に直してあげないといけない」という手話通訳者が残念ながらいる。
/目が安い/という手話をするろう者がいますが、「目が安い」という言い方はないということを教えてあげてくださいという具合に。
日本語を引用する時に日本語の元の意味を間違えることはあるかもしれないが、日本手話の/目が高い/のような慣用句は、それ自体が日本語のそれとは異なっているだけに過ぎない。
さて、ここで英語の文例。
It rains cats and dogs.
えっ、猫(cat)と犬(dog)の雨が降る(rain)?
でも、日本人は、英語が間違っているとは思わない。
(正解は「ひどい土砂降りだ」という意味)
けれども、日本語と似ている手話の慣用句(あるいは慣用的表現)や見慣れない手話については、自分のほうが知らない(あるいは間違っている)とは思わずに、手話が間違っていると決めつけられてしまう。
手話は言語であると言われながらもいまだに不当な扱いを受けているのだ。
(2004.12.27)
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コメント
はじめまして。「手話」「ろう者」でサーチしてたどり着きました。
「目が高い、安い」のお話ですが、ろう学校高等部の中で使われていたので、
今思いだすと懐かしいです。
卒業後に聴者に指摘されたとき、自分ではうまく説明できなくて
「ろう学校で使われていたから」としか言えませんでした^^;
今思い出しましたが、「オーバー」という言葉も、高等部の中でよく使っていました。
聴者の中では「大げさだな~」という時に使いますよね。
ろうの友達の間では「えっ、すごい~」「それってやりすぎだよね」みたいな感じに使っていました。
聴者に使うと、「オーバーじゃないわよ。ホントにすごいでしょ」と言われてました。
投稿 なゆ | 2005/05/08 13:59
店の住所も書いてくれたら嬉しいんだけど。。。
投稿 おみや | 2005/03/17 16:25